北山時雨(きたやましぐれ)

北山時雨

カメラを肩に歩き出したら、くっきりと虹が。

歩く人たちがスマホを取り出してついつい撮ってしまうくらいきれい。私も負けじとカメラを構えるけれど、あっちの屋根が邪魔になり、こっちの電線が虹を分断。よーし、虹が消える前に、賀茂川までひとっ走りだぁ。

たどり着いた北山橋から、東北の方角に端から端まで虹の架け橋。パシャ、パシャ、撮りまくる。下手も数打ちゃ一つくらいとおもって、虹を半分撮ったり全部撮ったりあれやこれや。あらあら、バイク二人乗りのカップルさん、あぶないです。彼女が写真撮りたいからって、橋の上で急にとまっちゃ。後ろの郵便配達のバイクさんがこけそうになっちゃいます。そうかと思うと、東から歩いてくるあのおじさんは、虹が出てる事には気づいてなさそう。ああ、南に渡ろうとしているこの子連れさんも。素敵な虹を教えてあげたいのに。

きっと、橋の下におりていっても、ちがった虹が撮れるはず。そう思って歩き出す。

すれちがったのは、橋の方へと南に歩いていくおばあちゃま。信号で立ち止まったのに、その時間だけでも虹を見たら?きっと幸せになるよ。

そう思って、今の今まで我慢に我慢していた一言を。

「虹、きれいですよ。」

そうしたら、おばあちゃま、北の山の方を振り返って、

「今の時期、紅葉見るくらいの時期には、北山時雨っていって、こんな天気の時には、よう虹が出るんですよ。」

と。

そうなんだあ、虹見てたんだあ。知ってたんだあ。昔々から。きたやましぐれ、っていうんだあ。

お菓子みたいな名前やなあ。

何十年も前からずーっと北山時雨と虹を見てきた人に、よりにもよって声かけちゃったよ、私。

ちょっぴり恥ずかしかったけど、でもとっても得したような気分の私でした。